117_エボラ出血熱に見る致死率が高くなる不思議

保険に出てくる医療用語

117:エボラ出血熱に見る致死率が高くなる不思議

(2014-9-21)

エボラ出血熱は、日本の感染症法では、最も危険性が高いとされる「一類感染症」に分類され、その1号に指定されています。
もちろん災害の保険金や給付金の対象です。
「エボラ出血熱の死亡率は90%…」という記事をたまに見かけますが、それは間違いです。
「死亡率」は死亡者数をその地域の「総人口」で割った数値です。
総人口の9割も死んでいるわけがありません。
それは「致死率」が正解であり、死亡者数を「患者数」または「感染者数」で割った数値です。
エボラ出血熱の2014年8月現在の致死率は50%程度です。
しかし、この致死率は流行が「収束」に向かうほど上昇する可能性があります。
なぜならば計算上、分母である「患者数」の増加が止まり、分子である「死亡者数」が増えていくと、数値は上昇するからです。
流行が終わりそうなのに致死率が上昇するのは、感染症の悪性度が上がっていくわけではないのです。
感染者が増えていく過程で、有効な治療法によって死亡者数の増加が止まらない限り「致死率」は低下しません。
エボラウイルスは5種類ありますが、今回は最も悪性の「ザイールエボラウイルス」にほぼ一致しています。
過去に致死率90%を記録したタチの悪い病原体です。
この感染症が恐ろしいのは、致死率と共に「有効な治療薬やワクチンがない」という点でしょう。
医療機関で行われているのは対症療法であり、根本は患者自身の「免疫力」や「自然治癒力」に委ねられています。
しかし、世界保健機関(WHO)は2014年9月5日、2種類のエボラ出血熱のワクチンについて、早ければ11月から利用可能になると発表しました。
まだ効果は実証されていませんが「有効な治療薬やワクチンがない」と言われてきた歴史が大きく変わるかも知れません

*新しい情報によって事実や状況が変わる可能性がありますのでご了承ください。

 保険に出てくる医療用語 目次
­ TOPページヘ
 画面の上へ