山岳遭難を回避するためには…

ちょっと雑学

山岳遭難を回避するためには…

今年から8月11日が国民の祝日「山の日」に
「山の日」は「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」という趣旨のもと制定されました。
因みに「登山の日」という記念日がありますが、こちらは語呂合わせの「10月3日」。
(日本アルパインガイド協会が平成3年(1991年)に定め、日本記念日協会が平成7(1995年)に認定)
国民の祝日となったことをきっかけに登山を始める方も多いのではないでしょうか。
年に1回は登山をする人の数「登山人口」は800万人ともいわれています。
また、近年は健康増進を目的に登山をする高齢者の方も多く、登山人口のうち60歳以上の割合は4割を超えているともいわれています。
それに正比例するように増え続けているのが遭難件数・遭難死者数です。
警察庁がまとめた平成27年中の山岳遭難の状況によると、60歳以上の遭難者は1,565人で全遭難者の51.4%、死者・行方不明者は234人で69.9%を占めています。
高齢者の遭難が増えている理由については、「定年退職後に登山を再開した人が、若い頃登っていた頃と同じ調子で登るが、体力がついていかない」と指摘する声も耳にします。
自然と親しみ安全な登山のためには、服装・食糧・登山用品の装備だけでなく、「下準備」と「体力」も必要です。
これでもかというくらい下準備をしましょう。
登山に出掛ける数日前から、念入りに気象情報のチェックをしましょう。
地図を読めますか?
市街地なら地図が読めなくても目印がたくさんあり、迷ったとしてもなんとか目的地に辿り着けるでしょう。
でも、山岳地帯ではそうはいきません。
万が一遭難した場合、遭難場所の位置情報を伝えなければなりません。
道迷いを防ぐためにも登山地図とコンパスの使い方をマスターしておきましょう。
せっかく、「地図とコンパス」を購入していても使えなければ意味がありません。
地図が読めない、コンパスの使い方がわからない場合は、「地図読み講習会」などに参加しましょう。
登山の基本は「自力下山」
毎日ウォーキングをしているから大丈夫でしょうか?
平坦地を荷物なしで歩くウォーキングは登山のための体力作りといえるでしょうか。
山登りのためには、筋力トレーニングは勿論ですが、バランス力も必要となってきます。
自分の身体に合った方法で毎日トレーニングを続けることが「安全登山」「自力下山」に繋がります。
若い頃、登ったことがあるから大丈夫でしょうか?
過去の経験は時に過信を生み、リスクの判断能力の低下にも繋がります。
計画の段階であらゆる「危険」を想定して、どのように回避するのがいいのかイメージしてみましょう。
自分の力を過信せず、危険を回避し、安全登山を心掛けるのが登山の基本ルールです。
低い山だから大丈夫でしょうか?
昨今の登山ブームで、標高599mの高尾山でも避難者が増加し、救助隊の出動回数も増加しています。
高尾山岳救助隊でも登山届を提出するように呼びかけています。
「登山届」は何故必要なのでしょうか。
・無計画な登山の防止のため
・同行メンバーとの情報共有と各自の責任行動の確認のため
・緊急時の捜索・救助活動における早期発見ため
などです。
もしもの時に備え「登山届」を提出しましょう。
公益社団法人日本山岳協会:登山届様式
最近はネットでも提出できるようです。
compass
夏山の落とし穴
日帰りだから大丈夫でしょうか?
「天気予報は晴れだし、日帰り登山だから、雨具は装備しなくても大丈夫」と思っていませんか?
雨具は登山靴、ザックと並び「登山三種の神器」の一つです。
雨だけではなく、風や寒さなどを防ぎ、体温を奪われないために着用することがあります。
雨具も防水性・透湿性に優れたものだと、かなり値が張り、購入を躊躇する気持ちもわかります。
でも、「命を守る大切な物」です。
高額な雨具や登山用品の購入を躊躇う気持ちが強い場合は、登山自体をやめる選択をするべきなのかもしれません。「夏山だから、装備が軽くて簡単に登れそう…」と思っていませんか?
気温は標高が100m高くなるごとに、約0.6℃ずつ低下します。
半袖半ズボンなんて、もってのほかです。
富士山頂は真夏でも平均気温は約6℃で、これは真冬並みの寒さです。
さらに、風速が1m増すごとに1℃ずつ体感温度が下がるといわれています。
そこに雨が降り身体を濡らせばますます体温が奪われることになります。
体が冷えた状態が続くと「低体温症」になり、命にかかわる最悪のケースも考えられます。
低体温症とは、寒さや雨などで体の熱が奪われて起こる全身的な障害です。
雨や風など悪条件が重なると気温が10℃の時でも起こります。
体温調整能力が落ちている高齢者の場合は、本人が気付かないうちに症状が悪化することも多いのです。
「雪の多い冬山より夏山は、誰でも簡単に登れそう…」と思い込んでしまうことが夏山の落とし穴なのです。
もしもの時のために…
遭難した場合は、当事者が携帯や無線を使い、警察や消防に救助を要請することになります。
要請を受けた側は事故の規模に応じ、山岳警備隊や行政ヘリコプターを出動させ、救助に当たります。
しかし、必要な人員やヘリコプターがいつも確保できるわけではないのです。
公的機関で人員が確保できない場合は、山岳遭難対策協議会や山の知識・経験が豊富な民間の方々に協力を仰ぎ、合同で救助に当たることになります。
行政のヘリコプターが点検や別件での出動によって使えない場合は、民間のヘリコプターをチャーターすることになります。
民間に救助を要請する際は、家族等の了解を取りますが、緊急を要する場合は例外の場合もあるようです。
民間(ヘリ・救助隊)による救助費用は、100万円を超える場合もあります。
そんな時のために「山岳保険」があります。
山岳保険にも種類があります。
種類によっては「登山届」の作成が必要な場合もあります。
自分の登山スタイルに合った保険に加入することが大切です。
最も大切なことは…
ガイドが随行しているから大丈夫でしょうか?
ツアー参加での登山では、ついつい誰かを頼りにしてしまいがちです。
「ここはどこですか?」と尋ねる前に、地図とコンパスです。
山岳遭難を回避するためには、他人まかせにしないことも大切です。
そして、最も重要なのは、「判断力」です。
「体調が悪い時は、ツアーのキャンセル料が掛っても登山をやめる」、「道に迷った時や、悪天候になった時は、登らないで引き返す」といった「判断力」が生死を分けるのではないでしょうか。
「登る」だけが山を楽しむ方法ではない!
自然とふれあい、山と親しむためには「登る」のが一番かもしれません。
でも、体力に自信がない方には、「眺める」「写真を撮る」という方法もあります。
「切手の博物館」では、今年から新たに始まる国民の祝日「山の日」にちなみ「切手の山」展を開催しています。
期間は2016年7月1日(金)から9月29日(木)まで。
詳しくはこちら 切手の博物館「切手の山」展
富士山では、近年「弾丸登山」と呼ばれる0泊2日の登山や日帰り登山など、短時間で高度を上げたために高山病を発症し、登頂を断念する登山者が多くなっているそうです。
寝不足による登山も危険です。
しっかりと装備を整え、体力や経験を考え、無理のない山を選び、経験者のアドバイスを受け、慎重に計画を立て、それぞれのスタイルに合わせて、山に親しんではいかがでしょうか。
無理のない山選びのために…
山岳遭難防止のため、山梨、長野、静岡、新潟、岐阜の5県は、県内主要山岳の登山道の難易度を共通の基準で示す「山のグレーディング」を定めています。
自分の体力や経験に見合った山を選ぶ有効な手段です。
山梨県 「山梨 山のグレーディング
長野県 「信州 山のグレーディング
静岡県 「静岡県 山のグレーディング
新潟県 「新潟 山のグレーディング
岐阜県 「岐阜県 山のグレーディング
参考
尊い犠牲によって生まれた経験から学ぶべきこと…
公益社団法人日本山岳ガイド協会「トムラウシ山遭難事故調査報告書」静岡県警:「悲惨な山岳遭難を回避するために~生きて帰るための7箇条~」静岡県警:「安全登山診断テスト