高齢ドライバーによる交通事故は増えているのか?

ちょっと雑学

高齢ドライバーによる事故は増えているのか?

高齢のドライバーによる交通死亡事故が相次いで報道されています。
警察庁の「交通事故統計」によると、2015(平成27)年中に発生した交通事故は、前年比6.4%減の536,899件。このうち、死亡事故は0.4%増の4,028件で、4,117人(前年比0.1%増)の方が亡くなっています。(死者数は24時間以内の死者数)
発生件数 536,899件
  うち 死亡事故件数 4,028件
     重傷事故件数 37,012件
     軽傷事故件数 495,859件
死者数 4,117人
負傷者数 666,023人
    重傷者数 38,959人
    軽傷者数 627,064人
死亡事故件数は僅かに増加していますが、発生件数は減少しています。
では、交通事故を「第1当事者」の年齢層別にみてみましょう。
「第1当事者」とは、事故当事者のうち最も過失の重い者のことです。
死亡事故件数 交通事故件数
15歳以下 3件 77件
16~19歳 140件 18,412件
20~24歳 297件 54,547件
25~29歳 269件 47,206件
30~34歳 230件 42,356件
35~39歳 255件 43,729件
40~44歳 314件 50,835件
45~49歳 272件 43,558件
50~54歳 279件 37,092件
55~59歳 280件 34,871件
60~64歳 254件 36,816件
65歳以上 992件 100,551件

「65歳以上」のドライバーが起こした死亡事故は992件で、死亡事故全体の27.7%を占めています。
「16~24歳」では437件で12.2%ですから、やはり、高齢ドライバーの事故は増えていると言っていいのでしょうか。
では免許保有者10万人あたりの事故件数をみてみましょう。

死亡事故件数 交通事故件数
16~24歳 7.61件 1271.29件
65歳以上 5.80件 587.99件

交通事故件数は、「65歳以上」の免許保有者10万人あたり587.99件、一方「16~24歳」は1271.29件と「65歳以上」の2倍以上です。
死亡事故件数では、「65歳以上」の免許保有者10万人あたりは5.80件で、「16~24歳」は7.61件とこちらも「65歳以上」より高い数値です。
免許保有者10万人あたりでは、「高齢者」より「若年層」の交通事故件数・交通死亡事故件数ともに多いということです。
高齢化が進んでいるわけですから、「65歳以上」の免許保有者は増加しています。
平成17年末の「65歳以上」の免許保有者数は9,766,298人で全体の12.39%でしたが、平成27年末には倍近い17,100,846人となり、全体の2割を占めるようになりました。

平成17年 平成27年
16~24歳 7,554,009人 5,738,964人
25~64歳 61,478,514人 59,310,198人
65歳以上 9,766,298人 17,100,846人
合計 78,798,821人 82,150,008人

免許保有者が全て運転をするわけではないにしても、免許保有者数自体も増加しているわけですから、単に「件数」だけをみると「増加」していることになるのです。
詳しくはこちら 「原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別交通事故件数の推移」
詳しくはこちら 「免許保有者数の推移」

ところで「高齢者」って何歳以上?
40歳以上の男女3,000人を対象とした厚生労働省の「高齢社会に関する意識調査」では、「あなたは何歳以上を『高齢者』だと思いますか?」の問いに41.1%の人が「70歳以上」と答えています。
また、60歳以上の男女6,000人を対象とした内閣府の「平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査結果」(有効回収数 3,893票)によると、自分が「高齢者」だと感じる人は、43.4%となっています。
60歳の半数以上は、自分は「高齢者」ではないと思っているということです。
年金支給開始年齢が65歳となり、定年も65歳となった現在、どうしても「65歳以上」で括りたくなるのは理解できます。
しかしながら、体力・気力ともに個人差がありますから、「何歳以上」=「高齢者」と括るのは難しい問題です。
免許の自主返納を呼びかけているけど…
高齢者ドライバーによる交通事故が報道される度に、「一定年齢で免許を返納するべき」との声も耳にします。
事故を起こさないためにはそれも一つの手段かもしれません。
「電車やバスといった交通手段を使えばいいのでは?」と思う方も多いでしょう。
地方では首都圏などと違い「車=生活の足」なのです。
電車は廃線となり、バスも採算の合わない路線はルート変更や減便で、1時間に1本あればまだ良い方という地域も多くあります。
そういう地域に住んでいる方々にとっては、買い物・通院などの交通手段は「車」なのです。
ですから、「高齢者=何歳以上」で括れない以上に、「一定年齢での免許返納」はある意味生死に関わる問題なのです。1998(平成10)年に、道路交通法の改正により「運転免許の自主返納」ができるようになりました。
運転免許の自主返納制度は、運転を継続する意志がなく運転免許証を返納したいという人が、居住地を管轄する公安委員会に自身で申し出て、免許の取消を受ける制度で、「申請取消」ともいいます。
制度が始まった平成10年は自主返納件数は2,596件でしたが、平成27年には285,514件と当初の110倍となりました。
65歳以上が270,159件で、全体の94.6%を占めています。
返納件数が増えた背景に「運転経歴証明書」があります。
「運転経歴証明書」は、運転免許証を自主返納(=申請による取消し)をした日前5年間の運転に関する経歴を表示した、運転免許証と同一サイズのカード型の証明書です。
表面に「自動車等の運転はできません」と表示されます。
運転経歴証明書の交付は、2002(平成14)年6月から実施されました。
当初は申請期間は自主返納から1ヶ月以内で、本人確認書類として使用できる期間も発行からわずか6か月ということもあり、4,017件(うち65歳以上は3,821件)しか交付されませんでした。
2012年4月1日から申請期間が5年以内へと変更され、記載事項の変更や再交付もできるようになり、本人確認書類としての使用期間は永年有効と変わり、「免許申請取消件数」、「運転経歴証明書交付件数」ともに増加しています。
「運転経歴証明書」の「本人確認書類」としての効力は「運転免許証」ほどではありません。
金融機関によっては、「健康保険証」と同じく「住民票」が必要となる場合もあります。
平成27年中の「運転経歴証明書交付件数」は、236,586件(うち65歳以上は223,558件)と、当初の58倍となりました。
それでも、65歳以上の「申請取消件数」は免許保有者数の1.56%、同じく「運転経歴証明書交付件数」は、免許保有者の1.29%です。
詳しくはこちら 「運転免許申請取消件数」「運転経歴証明書交付件数」の推移」
「運転免許証」を「本人確認書類」としてのみ使っていた人の場合は、「運転経歴証明書」があれば返納してもいいとも思うでしょう。
しかし、「車=生活の足」である人は、それに変わる交通手段や対策がない限り、運転し続ける以外ないのです。
買物弱者は700万人

流通機能や交通網の弱体化とともに、食料品等の日常の買物が困難な状況に置かれている人々「買物弱者」を経済産業省は、700万人程度と推計しています。
また、農林水産省では、平成22年国勢調査の結果から、生鮮食料品店までの距離が500m以上かつ自動車を持たない人口は850万人、うち65歳以上は380万人にのぼると推計しています。
この推計値はちょっと実際より低いのではとも思ってしまいます。
というのは、高齢者にとって「500m」の距離を重たい荷物を歩くことはとても大変なことだからです。
行きが10分でも帰りは荷物が重くなた分時間が掛かります。
「ショッピングキャリーに入れれば済むこと」と考える方も多いと思われますが、平坦な道ならいざ知らず、高齢者にとって坂道では上りでも下りでも大変です。
特に急な下り坂では重くなったショッピングキャリーに身体ごと引っ張られます。
体力のない高齢者の場合、下手をすると転倒事故・骨折に繋がりかねないのです。

地方自治体などで「買い物弱者」を支援する様々な取組が行われているようです。
経済産業省 平成28年度 地方公共団体における買物弱者支援関連制度一覧
しかし、個々の要望全てに応えることは困難な状況ではないでしょうか。
家族やご近所と協力しながら、上手に自治体などの制度を利用して、買い物弱者にならないようにしていく以外ないようですね。

12月は交通事故発生件数死者数ともに多い月です。
平成27年の1日平均の死者数は11.3人で、2時間8分に1人が交通事故で亡くなっています。
因みに2015年の死者数が最も多かった日は12月25日(金)の26人で、最も少なかった日は2月5日(木)の3人でした。
年の瀬は何かと気忙しくなりがちです。
時間に余裕を持って行動することを心掛けましょう。
焦ると碌なことがありません。
また、高齢者に限らず、体調が悪いと感じた時は無理をせず、どうしても運転をしなければならない時は、いつも以上に慎重に安全運転を…。

ちょっと豆知識
12月12日は何の日?
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