国勢調査の人口って正しいの?

ちょっと雑学

国勢調査の人口って正しいの?

日本に住む「外国人」は何人?

総務省統計局が、2016年10月26日に「平成27年 国勢調査『人口等基本集計』の結果を公表しました。
平成27年「国勢調査」(2015年10月1日現在)では外国人の人口は、1,752,368人と報告されたのですが、法務省の「在留外国人統計」によると(2015年12月末現在の)在留外国人数は2,232,189人です。
なんと、「国勢調査」と「在留外国人統計」では、479,821人も違うのです。

「国勢調査」では、日本に常住している、外国人を含めてすべて調査の対象としていますが、下記は調査から除外されています。
(1) 外国政府の外交使節団・領事機関の構成員(随員を含む。)及びその家族
(2) 外国軍隊の軍人・軍属及びその家族
また「住民基本台帳に基づく人口」(2016年1月1日現在)での外国人は2,174,469人ですから、国勢調査の1,752,368人は非常に疑わしい、信じがたい数値といえるのではないでしょうか。
何故、このような差が生じたのでしょうか。
調査日が3か月違うからだけではないようです。

差が生じる理由は?

国勢調査の「人口等基本集計」では、男女・年齢・配偶関係、世帯の構成、住居の状態などがわかるのですが、その中に気になる文字があります。
それは「 不詳 」です。
年齢「 不詳 」、配偶関係「 不詳 」、日本人・外国人の別「 不詳 」など…。
今回の国勢調査の場合、日本人・外国人の別「 不詳 」は、1,058,476人です。
調査票に未記入や誤記入がある場合や、調査票に記入された内容の分類が不可能な場合に生じる「 不詳 」が、479,821人という差にも影響しているようです。

なぜ「不詳」の割合は増えるのか

「年齢不詳」とは、「高齢過ぎて何歳かわからない」という方の人数ではありません。
今回の国勢調査での年齢不詳数は1,453,758人です。
2015(平成27)年から全国でオンライン調査が導入され、当初の予想を上回る19,748,756世帯が回答しました。
オンライン調査では、情報が未入力の場合次にステップに進むことができないので、正しく情報を入力していれば 不詳 は発生しない筈です。
しかしながら、実は、前回の2010年よりも「 不詳 」の割合は増加しているのです。

平成22年 平成27年
年齢不詳 976,423人 1,453,758人
0.76% 1.14%
配偶関係不詳 2,070,676人 2,712,879人
1.88% 2.47%

日本人・外国人の別は、前回と分類が違うため比較できません。
平成27年国勢調査における調査票の回収状況について、回収⽅法別の割合をみると、「オンライン」が36.9%と最も⾼く、次いで「郵送」が34.1%、調査員などによる回収が29.0%でこのうち直接回収できなかった世帯の割合が13.1%。

平成22年 平成27年
オンライン   1.0% 36.9%
郵送 57.4% 34.1%
調査員等 41.6% 29.0%

平成22年のオンラインは東京都のみ実施。
また、平成22年国勢調査では、完全封入方式であったため、調査員段階における記入状況の検査が実施されないことにより、記入不備が著しく増加したため、今回の国勢調査は任意封入方式で実施されました。

「聞き取り調査」の限界
世帯員の不在などで、調査ができなかった世帯については、調査員などが、当該世帯について「氏名」、「男女の別」及び「世帯員の数」の3項目に限って、その近隣の者に質問することにより調査します。
所謂、「聞き取り調査」です。
昨今のプライバシーに対する意識の高まりで調査員による記入内容の確認に抵抗のある人に加え、単身世帯・オートロックマンションの増加で、調査員が直接訪問することができなくなるケースも増えています。
「聞き取り調査」においてもマンションなどの管理人が「個人情報保護」を理由に「聞き取り調査」に応じない事例も発生しています。
都市部での調査員による「聞き取り調査」は既に限界、いえ限界を超えているのではないでしょうか。

オンライン 郵送 調査員など 直接回収できなかった世帯*
政令指定都市 34.6% 36.6% 28.8% (21.3%)
市部 38.6% 34.0% 27.4% (9.9%)
郡部 34.1% 25.1% 40.8% (3.8%)
全国 36.9% 34.1% 29.0% (13.1%)

*調査員等による回収のうち、直接回収できなかった世帯の割合。

唯一の悉皆調査
国勢調査は55ある基幹統計調査(政府が実施する重要な統計調査)のうち、唯一の「悉皆(全数)調査」です。
他の調査のデータベースになる調査でもあります。
今回の国勢調査は西暦末尾「5」の年にあたりは簡易調査でしたが、次回2020年の国勢調査は西暦末尾「0」の年にあたり大規模調査が実施されます。
2020年は東京五輪の開催年でもあり、更に「 不詳 」の割合が増えそうな気がします^^;
国勢調査は「統計法」という法律に基づいて実施されます。
統計法の第13条には、国勢調査の対象者を「報告を求められた者」として、「報告を求められたものは、これを拒み、又は虚偽の報告をしてはならない」とあり、国勢調査の回答は法律で義務付けられています。
調査票の記入内容が他人に知られたり、統計以外のことに使われたりする可能性が本当にないのであれば、 安心して回答するところではありますが、「氏名」だけでなく「電話番号」の記入欄があると、ちょっと不安にもなりますよね。(オンライン調査では最後に「住所」「電話番号」を入力し、入力内容確認後送信)
「なぜ、『電話番号』の記入が必要なのか」という質問に、「電話番号の記入がないと、調査票の記入内容の照会や確認をすることができません。これは集計するものではありませんが、正確な統計を作成するために必要な項目です」と総務省統計局では回答しています。
更に「調査票に記入された内容は、厳重に守られます。どうぞ安心してご記入ください」とも…。ともあれ、悉皆調査である国勢調査の精度がこれ以上揺らぐことがないようにと願うばかりです。
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