看取り難民って?

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看取り難民って?

看取り難民が47万人?
「看取り難民」で検索をすると、 厚生労働省は「2030年には約47万人が、死に場所が見つからない“死に場所難民”になる可能性がある」と警告している という文面を多く見かけます。
この47万人という数字は2006年の人口動態統計実績を元に算出された数値です。
厚生労働省の地域包括ケアシステムの構築(平成27年5月19日資料)によると、「2030年までに約40万人死亡者数が増加すると見込まれるが、看取り先の確保が困難」とあります。
deathlocation この40万人という数値の根拠は2010年の実績を元にした数値です。
4年間で7万人減っています。
更に、2016(平成28)年の死亡数は1,307,765人で、国立社会保障・人口問題研究所の最新版日本の将来推計人口(平成29年推計)の2030年の死亡数(死亡中位仮定)推計は1,602,997人でしたから、その差は約29万人です。
deathlocation02 6年間で11万人減っていることになります。
それでも30万人近くの人が看取り難民となるのでしょうか。
そもそも看取りって?
看取りとは、病人の傍にいて死期まで見守り世話・看病することです。
最期を看取る場所は、1955(昭和30)年は、病院での死亡の割合が12.27%・自宅での死亡の割合が76.87%でしたが、1975(昭和50)年の病院41.77%:自宅47.70%を最後にその割合は逆転します。
2015(平成27)年の病院での死亡の割合は74.59%、自宅での死亡の割合が12.71%です。
現在の割合と40年前の割合は真反対です。
2025年問題をご存じですか?
「2025年問題」とは、団塊の世代が2025年頃までに後期高齢者(75歳以上)に達することで、介護・医療費等社会保障費の 急増が懸念される問題のことです。
団塊の世代とは1947年〜1949年生まれの日本において人口比率がもっとも高い世代です。
2025年には後期高齢者が約2,200万人(17.8%)になると推計されています。
現在、医療現場の減少傾向にあり、比較的医療が必要となる高齢者が劇的に増えていく状況が起きると、どうなるのか…。
病院をたらい回しにされることになりかねません。
たらい回しにされながらも、どこかで受け入れてもらえれば、いいのですが…。
そこで、厚生労働省の地域包括ケアシステムの出番となるわけです。

2025年(平成37年)を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています

出典:厚生労働省

しかしながら、在宅療養支援診療所届出数は2015(平成27)年現在11,624しかありません。
365日24時間体制に対応できる医師・医療機関が全国的に不足しており、在宅医療は思うように進んでいないのが現状です。

行旅死亡人って?
死亡場所の「その他」ってどこをいうののでしょう。deathlocation03 「その他」とは、山や川、路上などで、病院・診療所・介護老人保健施設・助産所・老人ホーム・自宅以外の場所のことです。
2015(平成)年には27,585人の方が「その他」で亡くなっています。
そのうち65歳以上の男性が8,508人女性が9,130人で63.9%を占めています。
ところで、「行旅死亡人」って聞いたことがありますか?
「行旅死亡人」とは、名前も住所も分からず、かつ遺体を引き取る人もいない死者の法律上の呼称です。
「行き倒れ」というイメージが思い浮かびますが、そうでないケースもあります。
例えば、亡くなったのは自宅(住居内)であっても、なんらかの事情で戸籍上の名前以外を使用していたなどで、身元が判明しない場合「行旅死亡人」となるわけです。
身元不明のご遺体は自治体が引き取り、火葬して所持品を管理することになります。
その後、「行旅病人及行旅死亡人取扱法」に基づき、官報に死亡場所や身体的特徴、所持品などが記載されます。
近年、高齢者の独居世帯の増加により、引き取り手のないご遺体が増えているようです。
行旅死亡人
やはり終の棲家は自宅?
厚生労働省は、増加する看取りの受け皿として、医療機関の病床増ではなく、在宅や介護施設等での看取りを増やすことで対応していく方針です。
また、内閣府が行った24年度の高齢者の健康に関する意識調査では、自宅で最期を迎えたい人が54.6%です。
看取ってもらう側にとっては、介護を受ける場所も看取ってもらう場所も住み慣れた場所を希望するのは本音です。
しかし、在宅看取りの経験者はその大変さを実感していますから、周りに自分と同じ苦労をさせたくない、迷惑をかけたくないという思いが強くあり、医療機関や介護施設を希望するケースが多いのではないでしょうか。
自宅で亡くなった場合は、「かかりつけ医」の存在が重要となってきます。
何故ならば、「死亡診断書」を書いてもらわなければならないからです。
現在「かかりつけ医」のいる方も、容態が悪くなった場合の緊急時の連絡先を知っておくことです。
もしもの時に焦らないためにも、家族がいる人は家族で、看取りを終えたあとのことを話し合っておくことも大切です。
身寄りのない単身者は元気なうちに最期に備える準備を始めなければなりません。
例えば、信頼できる人と「死後事務委任契約」を行い、作成した「死後事務委任契約書」を公正証書にしておくなど…。
兎にも角にも、最期を迎える場所は「その他」だけは避けたいものですね。
参考