雇用保険料率はなぜ引き下げ可能なの?

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雇用保険料率はなぜ引き下げ可能なの?

雇用保険は労働保険の一つ…
雇用保険は、政府が管掌する強制保険制度で、労働者災害補償保険(労災保険)とあわせて、労働保険といいます。
保険給付は両保険制度で別々に行われていますが、保険料の納付等については一体のものとして取り扱われています。
労災保険の保険料は、全額事業主負担で、従業員は1円も負担することはありませんが、雇用保険の保険料は、事業主と労働者が負担します。
雇用保険料の計算方法は?
労働保険料は、労働者に支払う賃金総額に保険料率(労災保険率+雇用保険率)を乗じて得た額です。
したがって、雇用保険料は「毎月の賃金総額」に「雇用保険料率」を掛けて算出します。
「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が平成29年3月31日に国会で成立し、平成29年度(平成29年4月1日から平成30年3月31日まで)の雇用保険料率は下の表のとおりとなっています。
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労働者(被保険者)の負担は失業等給付のみですが、事業主は失業等給付と雇用保険二事業の保険料を負担します。
平成29年度の失業等給付保険料率が労働者負担・事業主負担ともに1/1,000ずつ引き下げられています。
前年度も失業等給付保険料率は、1/1,000ずつ引き下げられていました。
社会保険料は毎年のように上がっていくのに、なぜ雇用保険料は引き下げが可能なのでしょうか?
失業等給付の料率は…
実は、失業等給付の料率は、「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」第12条第5項の規定に基づき、 雇用保険受給者実人員の状況や積立金の状況 を勘案し、一定の範囲内で、厚生労働大臣が労働政策審議会の意見を聴いて変更することが可能とされているのです。
では、雇用保険受給者実人員と積立金の状況はどうなっているのでしょう。

雇用保険受給者実人員の推移
年度 受給者実人員
(年度平均)
2011(平成23)年度 624,953人
2012(平成24)年度 576,277人
2013(平成25)年度 526,858人
2014(平成26)年度 467,052人
2015(平成27)年度 435,563人
受給者実人員は2011年から2015年の5年間で約19万人の減少となっています。
(受給者実人員数は年度間月平均値)
雇用保険の積立金って?
雇用保険の積立金は、雇用・失業情勢が悪化した際にも安定的な給付を行うため、好況期に積み立て、不況期に財源として使用するもので、特別会計に関する法律第12条の規定に基づいて、財政融資資金に預託して運用されています。
その積立金の残高が、平成27年度決算で64,260億円です。

雇用保険積立金残高と受給者実人員の推移

雇用保険積立金残高と受給者実人員の推移

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失業等給付関係収支状況

社会保険の場合は、好景気だからといって病気になる人が減るわけではありませんし、超高齢化が進む我が国では、健康保険からは常にお金が出ていっています。
雇用保険の財政は経済状態によって変わるのが特徴です。
不景気で失業者が増加しないと支出も増えない雇用保険は、フレキシブルに保険料を増減できるのです。
このまま、低い保険料率で景気も良くなり、失業者が増えなければいいのですけど…。
それにしても、残高が6兆円って、すごいですね!

雇用保険二事業

雇用保険二事業とは労働者の職業の安定のために行われる、雇用機会の創出(雇用安定事業)、能力開発(能力開発事業)の2つの事業のことです。これらの事業の推進を図った事業主に対しては、助成金が支給されます。以前は雇用福祉事業も含めて「雇用保険三事業」とされていましたが、2007(平成19)年4月の改正雇用保険法の施行により、同事業は廃止されました。