ちょっと疑ってみませんか…

ちょっと雑学

ちょっと疑ってみませんか…

「26.8%」は、「3割」なのか「4分の1」なのか

厚生労働省が、2017年1月18日に「平成28年度 人口動態統計特殊報告『婚姻に関する統計』の集計結果を公表しました。
この発表を受けて新聞各紙も報道しました。
全国紙(Web刊)で、【3割が再婚 晩婚化さらに進む】と【結婚の4分の1が「再婚」】、この2社の「見出し」の違いがちょっと気になりました。
前者は分数で後者は歩合で表示です。
両者とも百分率で表示すると30%と25%になりますから、5%も違うことになります。
100組だと5組ですが、10万組だと5,000組も違うことになります。
厚生労働省の発表した婚姻件数635,156組のうち再婚(初婚同士を除く)は170,181組ですから、その差は31,758組ともっと開きます。
今回の調査結果の場合では、総婚姻件数に対する再婚の割合は「26.8%」です。

婚姻総数 割合 再婚
635,156組 25.0% 158,789組
26.8% 170,181組
30.0% 190,547組

25%で11,392組の差、30%だと20,366組の差が生じます。
「25%」つまり「4分の1」の方が「3割」より実際の数値には近いのです。
こんな回りくどい計算方法を取らなくても百分率の引き算でもわかりますが、元の数値が大きければ大きいほど、0.01%の差で大きな差となるのです。
あくまでも新聞の「見出し」での表示についてです。
両社とも記事本文にはちゃんと「26.8%」と表記はしてありましたので誤解のないように…。
因みに全国紙他3社のタイトルは百分率表示で、うち1社は小数点以下切り捨て表示でした。

「4分の1」を超えたのは10年前から…
軍配を上げた「4分の1」についても物申したいことがあります。
【結婚の4分の1が「再婚」】と「見出し」だけを見ると、今回の調査で初めて「4分の1」を超えたように感じませんか?
厚生労働省の平成28年度人口動態統計特殊報告「婚姻に関する統計」の概況には、「構成割合をみると、『夫妻とも再婚又はどちらか一方が再婚』は上昇傾向にあり、平成17年には25%を超え、平成27年は26.8%となっている。」とあります。
実は既に2005(平成17)年には「4分の1」を超えていたのです。
婚姻・離婚・人口などの推移はこちら 
今回、厚生労働省が発表した「婚姻に関する統計」は、「人口動態統計特殊報告」の一つで、昭和62年度「婚姻統計」、平成8年度「婚姻統計」、平成18年度「婚姻に関する統計」に続いて今回で4回目で10年ぶりの報告ですが、「人口動態統計」は毎年発表されており、婚姻・再婚の割合の推移などの詳細統計のある程度は、政府統計の総合窓口e-Statで確認することができます。
数字は嘘をつかない?
「数字は嘘をつかない」と思いますか?
ある調査結果を書いたサイトでは、「見出し」には「3割が○○」と書かれていましたが、記事本文では「○○の割合は24.6%」となっていました。
それに比べると、「26.8%」は四捨五入すれば「3割」ということになり、「3割が再婚」はまだ良心的であり「嘘」ではありません。
また、新聞記事の場合はWebサイトとは違って、「段組み」などで文字数の制約を受けますし、特に「見出し」はインパクトのある表現をします。
今回の「3割」という表現は「嘘」ではなく、致し方ないのかもしれません。

数字は変わる…

数字は区切り方や見せ方で印象が変わります。
「3割」や「4分の1」は、「26.8%」という数値から作られたものです。
お化粧をした「3割」とちょっと減量した「4分の1」。
「26.8%」は、小数点以下1桁に丸められていますから、「26.750~26.849」の可能性があります。
今回は、元となる数字(分母も分子)もちゃんと厚生労働省から与えられていて、「26.8%」は「26.7935751…」であることが明らかです。
よく目にする「日本人の3割が・・・」「中学生の3人に2人が・・・」といった「見出し」に誘導されてよくよく記事を読んでみると、サンプル数が100人だったり、地域が偏っていたりします。
マルチメディアの発達に加えスマートフォンの普及で、情報が氾濫する時代です。
お化粧をした数字に騙されないために、多くの情報より正確なものを見抜く力を身に付けたいものです。
その情報の出所はどこなのか、調査の対象人数は何人なのかなどと思いながら情報を見ることだけでも変わってきます。
「そうなのか」と情報を鵜呑みにするのではなく、「その数字本当?」などとちょっと疑って見ることで、より確かな情報を得ることができるのではないでしょうか。

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