ガス自由化でどう変わる?

ちょっと雑学

ガス自由化でどう変わる?

2016年4月から電力が自由化されましたが、2017年4月からはガスも自由化されます。
これまでは、地域で決められた都市ガス会社としか契約できなかった家庭でも、自由にガス会社を選択できるようになります。
現在のガス事業者数をご存知ですか?
いったい日本にガス会社っていくつあるのでしょう。
日本ガス協会の都市ガス事業者の現状によると、一般ガスが203(うち公営26)事業者、LPガスが約19,500事業者です。
東京ガスのように利用者が1,000万件を超える事業者から数百件の事業者まで幅広く存在し、地域に密着して事業を展開しています。
上位の東京ガス・大阪ガス・東邦ガスの3社で約70%を、上位13事業者(1事業者は公営)で全国の約85%を占めているのが現状です。
公平なガス事業競争を行わせるために政府は「ガスの導管分離」を2022年に開始する方針です。
「ガスの導管分離」とは、実際に導管を切り離すのではなくて、ガス導管の整備・管理から小売りまで一貫して手掛けてきた大手の会社から、ガスを運ぶ導管部門を分離させて別会社化するということです。
2016年時点で、「導管分離」の対象はこの大手3社(東京ガス・大阪ガス・東邦ガス)限定です。
都市ガス事業者別取付数・普及率(2013年)
2017年4月から自由化されるのは、都市ガス・簡易ガスの家庭です。
都市ガスとLPガスの最も大きな違いは供給システムです。
都市ガスは道路の下のガス導管を通じて供給され、LPガスはLPガスが入ったボンベによる供給です。
この都市ガスの導管が整備されている地域は全国土の6%弱しかありません。
その6%弱を2,833万件が利用しています。
一般ガスの普及率は53.0%(平成25年度末)で、東京都(101.81%)、大阪府(99.15%)と高い普及率となっていますが、島根県では9.89%、山梨県では10.62%、沖縄県で10.66%と低い普及率の道県が多数存在しているのが現状です。
(普及率が100%を超えるのは、取付メーター数を世帯数で除しているため)
都市ガス普及率
意外と知らないガスのこと…
都市ガスに種類があるのをご存知ですか?
発熱量や燃焼速度の違いにより全国で7グループ13種類あり、地域によってガスの種類が異なります。
そのガス規格の意味は、数字の部分は熱量、英字の部分は燃焼速度を示しており、A→B→Cの順で速くなっていきます。

種類 発熱量
13A 10,000 ~15,000 kcal/m3
12A 9,070 ~11,000 kcal/m3
6A 5,800 ~7,000 kcal/m3
5C 4,500 ~5,000 kcal/m3
L1(6B、6C、7C) 4,500 ~5,000 kcal/m3
L2(5A、5B、5AN) 4,500 ~5,000 kcal/m3
L3(4A、4B、4C) 3,600 ~4,500 kcal/m3

日本の都市ガス利用者の90%程度が13Aを利用しています。
ガスの品質によっては2~3倍程度も発熱量が違う場合があります。
よく「ガス臭い」と言いますが、基本的に都市ガスもLPガスも無色無臭です。
無臭であるため、漏洩の際に検知するのが難しく、「ガス事業法」ですぐにわかるように臭いをつけることが定められています。
「ガスっぽい臭い」は、数社のメーカーでつくられている「付臭剤」というものです。
都市ガスではそれぞれで購入しているため、全国各地で成分などが少し異なるそうです。

都市ガス プロパンガス
液化天然ガス(LNG)
liquefied natural gas
液化石油ガス(LPG)
liquefied petroleum gas
メタン プロパン・ブタン
無色・無臭 無色・無臭
空気より軽い
(6Aを除く)
空気より重い
空気の1.5~2倍
ー162度まで冷却すると液化
体積が1/600になる
ー42度まで冷却すると液化
体積が1/250
導管 ボンベ
スマートメーターってご存知ですか?
電力の話ですが、2014年4月の省エネ法改正によって、国内電力大手10社が「スマートメーター」の導入を決定し、各社が管轄内における全顧客の電力計を、スマートメーターに変えることになりました。
スマートメーターとは、毎月の検針業務の自動化やHEMS( Home Energy Management System)等を通じた電気使用状況の見える化を可能にする電力量計のことです。
スマートメーターの双方向通信機能により、月に1回の割合で検針員が契約者宅を訪問する検針作業や、引越し時に現地で実施する配線接続作業が不要になります。
電力会社にとっては、スマートメーターの導入により、人件費の削減と運営の効率化が期待できます。
消費者にとっては、デジタル化によりリアルタイムに電力消費量を把握・分析できるようになります。
引越しの際、契約アンペア変更の際など、立ち会いなどの負担を軽減できるほか、停電の際は、遠隔でスマートメーターの通電状況を確認されるため、復旧までの時間が短縮されます。
東京電力では東京五輪開催の2020年までに、すべての顧客先で双方向通信機能を持つスマートメーターの設置が完了する見込みです。

 国内の電力大手10社によるスマートメーター導入の予定
社名 設置完了
北海道電力 2023年度
東北電力 2023年度
東京電力 2020年度
北陸電力 2023年度
中部電力 2022年度
関西電力 2022年度
中国電力 2023年度
四国電力 2023年度
九州電力 2023年度
沖縄電力 2024年度

では、ガスや水道のスマートメーター化はどうなんでしょう。
水道は電話回線による自動検針システムはありますが、固定電話を契約しない世帯も多いことがネックです。
また、個人情報やセキュリティの面からメーターの目視が難しくなることも予測されます。
しかしながら、現段階では検針を自動化するためだけに「水道スマートメーター」を導入するのは、コストの負担が大きいのも実情です。
ガスの場合、LPガス市場ではボンベが空になりそうになったら満タンのボンベがすぐに届くため、消費者はガス欠の心配がなくなりますし、業者にとっても営業面でのメリットがあります。LPガスの方が導入が先行する可能性が大きいですね。
欧米の場合、地域で電力事業やガス事業を同一の企業や地方自治体が手掛けているケースでは、電気とガスあるいは電気と水道で同時にスマートメーターを導入するといった事例もあります。
電力業界では大手各社間で調整がつかなかったため、東電の仕様と関西電力・九州電力の仕様の2種類あります。
ガスのスマートメーターは、ガスの性質を考えても電力以上に統一化は難しそうですね。

電力会社とガス会社は仲が良いの?悪いの?
電力はこれまで大手電力10社の独占状態でした。
資源エネルギー庁(経済産業省)によると、登録小売電気事業者は平成28年10月24日現在の356事業者もあります。
電力自由化で新規参入した業者は、ガス会社・携帯電話会社・石油会社・総合商社など。
ガス会社は、2017年からのガス市場の小売り全面自由化を前倒しするように電力市場への参入を図りました。
電力とガスのセット販売を狙ってのことです。
自由化で最も激戦区である関東圏、東京ガスは東北電力と提携、東京電力とニチガス・TOKAIと提携…。
ん?東京ガスと東京電力は仲が悪いのでしょうか^^;
因みに、沖縄県に新規参入した電力会社はありません。
現在、沖縄県は都市ガス事業者も沖縄ガスのみです。
他にも1事業者しかない県は、山口県・徳島県・香川県・愛媛県・高知県・宮崎県。
四国4県は、全て四国ガスです。
やはり、ガスも電気と同様にガス普及率の高い都市での競争になるのでしょう。
意外と知られていないのが、電力各社は元々、発電用に大量の天然ガスを取り扱っているということ。
実は「ガスの取扱量」は東京ガスよりも東京電力の方が多いのです。
自由化でどう変わる?
毎日使う電気・ガスの料金は安いに越したことはありませんが、一抹の不安が残ります。
それは災害時…。
1995年の阪神大震災では、ガスの完全復旧には12週間。2011年の東日本大震災では、5週間。
災害時に強いのは都市ガスより個別に供給可能なLPガスと言われています。
でも、料金が高いと言われているのもLPガスです。
都市ガスの自由化で、LPガスの価格が値下げされる可能性もあるようです。
LPガス料金も電気とセットで安くなり、さらにポイント付加といったサービスが始まるかもしれません。
電力自由化で実際に業者変更をしたのは8月末現在で全体の約3%。
今一つ業者を切り替えられなかった方も、ガス自由化で少しは前向きに考えるかもしれませんね。
電気・ガスは大切なライフライン、洋服のように気分で変えるわけにはいきません。
電力自由化では、携帯電話業者の参入で、電気・ガス・携帯電話代がまとめて安くなる「新電力トリプルセット割」という言葉も登場しました。
ガス自由化ではどんな魅力的なプランが打ち出されるのでしょうか。
しっかりと情報収集をして、スマートな消費者でありたいものです。
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